「うちの子、教室で何をやってるんだろう?」——そんなふうに気になったことはありませんか。私もときどき、授業の様子を少し離れた場所から見ていて、思わず笑いをこらえることがあります。この記事はそんな日の記録です。
2025年8月、宜野湾のプログラミングスクール「クロスウェーブ」の授業中、ひとつの奇妙なゲームが誕生しようとしていました。
題材は、宜野湾市に古くから伝わる「羽衣伝説」。 使ったツールは、紙とえんぴつ、そしてAI(ChatGPT)。
結末は、天女がUFOに攫われたり、覗き見をした主人公が警察に捕まったりするカオスな展開になりましたが——それでも、あの日の子どもたちの真剣な顔つきは、今も忘れられません。

宜野湾の羽衣伝説って、どんな話?
少し背景をお伝えします。
宜野湾市には「羽衣伝説」が伝わっています。天女が羽衣を脱いで海辺で水浴びをしているところを人間の男性に羽衣を隠され、天に帰れなくなり、そのまま地上で暮らすことになるという、日本各地にも類似する昔話の系譜に連なる物語です。
この伝説を題材にゲームを作ろう、と言い出したのは子どもたち自身でした。
マイクラカップに向けた制作と並行して、「自由研究でゲームを作りたい」という流れになり、では題材はどうする?という話になったときに、「宜野湾に伝わる話を使おう」というアイデアが出てきたのです。
地元の伝説をゲームの世界に持ち込もうとする発想、悪くないどころか、かなりいい!
シナリオは、まず紙に書くところから
最初にやったのは、シナリオを紙に書き出す作業でした。
プログラミングと聞くとパソコンをバチバチ叩く姿を想像しがちですが、ゲームを「創る」という体験は、実はアナログなところから始まります。「どんな物語にするか」「どんな選択肢を用意するか」「どんなエンディングが待っているか」——こうした設計を頭の中だけで考えるのではなく、まず紙に広げて可視化する。
この「設計を言語化する」というプロセスが、プログラミングの本質に近いことを、私は30年以上エンジニアとして仕事をする中でずっと感じてきました。コードを書く前に、何をどう動かしたいかを言葉で整理できるかどうか。これができる人とできない人では、後の成長速度が大きく変わります。
子どもたちは紙を広げ、「主人公はどうするか」「天女と会うにはどこへ行くか」「羽衣を見つけた後に選択肢は何か」を、ああでもないこうでもないと相談しながら書き込んでいきました。
その真剣な顔が、いつもゲームで遊んでいるときの顔と、同じようで少し違う。どこか設計者の顔になっていくのです。

ChatGPTに「絵を描いてもらう」という体験
シナリオの骨格ができたら、次はビジュアル制作です。
今回の挑戦は「ChatGPTに画像を生成してもらう」こと。文章でAIに指示を出し(これをプロンプトと呼びます)、イメージした場面を絵にしてもらう体験です。
「天女が海辺に立っているシーン、どう伝えたらいいか」「宜野湾の海っぽい感じにするには何て言えばいい?」と、子どもたちは自然に「AIへの話しかけ方」を考え始めます。
これが面白い学びの瞬間です。
AIは「なんとなく」では動きません。曖昧な指示には曖昧な結果が返ってくる。「天女」「海辺」「青い空」「沖縄っぽい」——具体的なキーワードを選んで組み合わせるほど、イメージに近い絵が生成される。この試行錯誤を繰り返すうちに、子どもたちはAIと「対話」することを体感的に学んでいきます。
生成された画像を見て「なんか違う!」「こっちの方がいい!」と言いながらプロンプトを調整する様子は、まさにエンジニアがデバッグ(プログラムの誤りを見つけて修正する作業)をしているときの姿そのものでした。
ゲームは、こうして「カオス」になっていった
さて。シナリオが進むにつれ、ゲームの内容が少しずつ、予想外の方向へ転がっていきました。
「選択肢を間違えたときのバッドエンドを作ろう」という流れになり、子どもたちの創造力が全開になったのです。
選択肢を間違えると——

「覗きで警察に捕まる」

天女がUFOに攫われる
……どんな話を作るつもりなんだろうと、指導する立場としては笑いをこらえながら見守るしかありませんでしたが、あのエンディング画像のインパクトは相当なものでした。ChatGPTが生成した「警察に連行される主人公」の絵も、「UFOに吸い込まれる天女」の絵も、子どもたちは大喜びで画面を見せてくれました。
「これ、エンドロールで流したい!」と言い出した子もいて、もうゲームなのか映画なのかわからない方向に向かっていましたが、それはそれで全力の創作です。
私は正直に言います。あの日の教室は、笑い声が絶えませんでした。でも同時に、ものすごく真剣でした。
「遊んでいる」と「創っている」は、同時に起きている
保護者の方からよく聞かれることがあります。「ゲームを作るといっても、結局遊びじゃないの?」と。
この問いへの私の答えは、「そうです、遊びです。だからこそ価値があります」です。
ゲームを「プレイする」のと「創る」のは、まったく異なる行為です。プレイヤーは与えられたルールの中で楽しむ。でもクリエイターは、ルールそのものを設計します。「選択肢が3つあるとき、プレイヤーはどれを選ぶか」「間違えたとき、どんな体験をさせるか」——これは、ユーザー体験の設計であり、論理の設計です。
今回の授業で子どもたちが紙とえんぴつでやっていたことは、まさにその「設計」でした。AIに絵を指示するために言葉を選ぶ作業は、「どう伝えれば意図が伝わるか」という論理的コミュニケーションの練習です。
プログラムの勉強をしながら、地元の伝説を調べながら、AIと対話しながら、笑いながら——あの日の教室に「遊びと学びの境界線」はありませんでした。
AIをツールとして「使う側」になる体験
2025年現在、AIは大人の世界でも猛烈な勢いで広がっています。ChatGPTに代表される生成AIは、文章も絵も動画も作れるツールになりました。
「AIに仕事を奪われる」という不安を持つ大人が増える一方で、AIを道具として自在に使える人材の需要は急速に高まっています。使う側か、使われる側か——この差は、今後の社会で大きな意味を持ちます。
今回の授業で子どもたちがやったのは、まさに「AIを道具として使う」体験です。AIに何かを「させる」ためには、目的を言葉で整理し、指示を具体化し、結果を評価して改善する——というサイクルが必要です。これはプログラミングの思考法と、本質的に同じです。
宜野湾の小学生が、地元の羽衣伝説を題材にAIと協力してゲームを作る。この体験の価値は、できあがったゲームのクオリティよりも、そこに至るプロセスにあります。
「自由研究」でここまでできる、という話
夏休みの自由研究として取り組んだこのプロジェクト。「何を作ったか」だけでなく、「どうやって作ったか」をまとめれば、かなりユニークな作品になります。
- 宜野湾市の羽衣伝説をリサーチした
- ゲームのシナリオを自分たちで設計した
- AIに画像を生成してもらうためのプロンプト(指示文)を考えた
- バッドエンドを含む複数のエンディングを作った
これだけの内容が詰まっている自由研究は、そうそうありません。
クロスウェーブの授業は「プログラミングを教える教室」ですが、それ以上に「創ることの面白さを体験する場所」でありたいと私は思っています。一つの作品が完成したときの「やった!」という顔を、これからも見続けていきたいのです。
宜野湾発、子どもたちの創作はまだ続いている
このゲームが完成したかどうかは……正直、まだわかりません。
子どもたちは次の授業でも「あのゲームの続きやりたい!」と言ってくれています。天女がUFOから帰還するルートを追加したい、エンディングを増やしたいと、次々アイデアが出てきています。
地元・宜野湾の伝説が、子どもたちの手でどんなゲームになっていくのか。完成したらまたお伝えします。
ゲームを「消費する側」から「創る側」へ——その第一歩は、紙一枚とAIへの指示文から始まります。
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すずきたかまさ(鈴木孝昌)|沖縄マイクラ部・クロスウェーブ代表
1993年よりWeb制作・システム開発に携わる現役エンジニア・プロジェクトマネージャー。官公庁・自治体のシステム構築実績多数。米Google本社・Meta本社へ自治体SNS専門家として招待。マイクラカップでは第6回・第7回と連続して沖縄代表チームを指導、第7回はTBS賞を受賞。プロフィール詳細
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コミュニティ中枢であるFMうるま特設会場にて、定期講座および地域連携のデジタルイベントを開催しています。
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