
宜野湾市の地図データを読み込んで作ったマインクラフト(マイクラ)の街を歩いていると、建物の形は全然違うのに、交差点を一つ曲がったところで「あ、ここ知ってる!」となるんですよね。道路のつながり方と坂の感じが、ちゃんと宜野湾なんです。
この街を、宜野湾の子どもたちが自分の街を学ぶ教材にしたい。通学路をたどって、地図とのちがいを探して、調べたことはプログラミングで仕掛けにする。いま、そんなワークショップを本気で計画しています。
先に、事実だけを3行でまとめておきます。
クロスウェーブは、OpenStreetMapの地図データと標高データから、宜野湾市全域のマインクラフトのワールドを生成しました。 宜野湾市は、第8回マイクラカップの自治体パートナーに入っている沖縄県内で唯一の自治体で、宜野湾市教育委員会は宜野湾プログラミングコンテスト2026を後援しています。 このワールドを使った地域学習のワークショップを、通学路、地図とのちがい探し、未来のまち、防災などのテーマで計画しています。

宜野湾市の地図データから、マインクラフトの街ができるまで
使ったのは、Arnis(アーニス)という無料のツールです。OpenStreetMap(オープンストリートマップ)という、世界中の人が書き足している地図のデータと、土地の高さのデータを読み込んで、マインクラフトのワールドに変換してくれます。公式サイトは arnismc.com です。
宜野湾市の全域を最初に生成したのは、2026年9月でした。そのときの手触りは 自分たちの街がMinecraftになった|Arnisで宜野湾市全域をマイクラ化してみた にnoteで書いています。
できあがった街を歩くと、建物は現実とかなり違います。平屋が多い住宅地に、見たことのない形の建物が並んでいたりします。地図データには、建物の細かい形や高さまでは入っていないことが多いので、ここは仕方がないところです。それに、OpenStreetMapは誰でも編集できる地図なので、新しくできた道やお店がまだ載っていないこともあります。
一方で、道路の位置や曲がり方、交差点のつながり、土地の高い低いは、かなり実際に近く出ます。海に向かって下っていく感じや、内陸の高いところへ上がっていく感じが、歩くと足で分かるんです。
正直、最初は建物が違いすぎてがっかりしかけました。でも何本か道を歩いてみて、考えが変わりました。子どもが自分の街を学ぶ入口としては、建物のそっくりさより、道がつながっていることの方が大事なんじゃないか。今回の記事は、そこから始まっています。

地図データとPLATEAUは何が違う?宜野湾市で地図データを選んだ理由
宜野湾市とマインクラフトの話をすると、「PLATEAU(プラトー)は使わないんですか?」と聞かれることがあります。
PLATEAUは、国土交通省が進めている3D都市モデルの取り組みです。建物の形や高さに加えて、その建物が何に使われているか、といった情報まで持った都市のデータです。くわしくは PLATEAU(国土交通省) の公式サイトにあります。PLATEAUのデータをマインクラフトの形式に変換する公開ツールもあって、建物の高さは地図データよりずっと現実に近く出ます。
自分は2024年11月に、那覇市のPLATEAUのデータをマインクラフトに取り込んだことがあります。そのとき、建物の高さも道の位置もデータどおりなのに、首里のあたりで迷子になりました。データが正確なことと、子どもが歩ける教材になることは、別の仕事なんですよね。そのときの記録は 那覇の街をマイクラに入れた夜、迷子になった|沖縄でPLATEAUを教材にする に書いています。
では宜野湾市はどうか。2026年10月14日に、国のオープンデータの窓口であるG空間情報センターで「宜野湾」を検索した範囲では、宜野湾市のPLATEAUのデータセットは見つかりませんでした。出てきたのは、登記所の地図データでした。だから宜野湾市は、OpenStreetMapの地図データから入る道を選んでいます。
使ってみての違いを、エンジニアとしてざっくり言うとこうなります。
- PLATEAU:建物の形や高さ、用途に強い。データがある市町村が限られる
- 地図データ(OpenStreetMap):建物は粗いが、道路のつながりや土地の高低差で「自分の街」だと分かる。世界中のほとんどの場所で使える
どちらが上、という話ではありません。何を学ぶかで使い分けるものだと思っています。建物の高さや街並みを比べたいならPLATEAU、通学路や坂、街のつながりを歩いて確かめたいなら地図データ、という感じです。宜野湾市のPLATEAUのデータが公開されたら、同じ場所を二つのワールドで見比べる授業もやってみたいですね。
宜野湾市とPLATEAUと地域のプログラミング教育の考え方は、以前 宜野湾市の未来をマイクラで設計する。PLATEAU(3D都市モデル)を活用した、地域密着型プログラミング教育の挑戦 にもまとめました。今回の地図データのワールドは、その考え方を宜野湾の地面の上で試すための土台です。
宜野湾市は、子どものマイクラとプログラミングを公式に応援している市です
宜野湾市を題材に選んだのには、住んでいる街だから、以上の理由があります。
マイクラカップは、教育版マインクラフトを使って子どもたちがチームで作品を作るコンテストで、地域の子どもを応援する「自治体パートナー」という仕組みがあります。大会の公式発表(2026年7月8日)では、第8回の自治体パートナーは7府県・23市区町で、沖縄県の自治体は宜野湾市だけです。宜野湾市は2026年6月に、県内で初めてパートナーになりました。一覧は マイクラカップ公式の地区大会と自治体パートナーのお知らせ で確認できます。
宜野湾市は、特別賞「ぎのわんはごろも賞」も出しています。宜野湾市からの応募作品の中で、テーマに沿って沖縄の未来を感じさせる創造性あふれる作品に贈られる賞です。子どもがマインクラフトで描いた沖縄の未来を、市の名前が入った賞で認める仕組みがある。これ、すごいことだと思いませんか?
佐喜眞淳市長への表敬訪問では、沖縄マイクラ部の子どもたちが、マイクラカップ全国大会のTBS賞の報告と、マインクラフトで作った宜野湾の街の話を市長に届けました。その日のことはnoteの マインクラフトで描く宜野湾市の未来。佐喜眞市長表敬訪問の現場から に書いています。市がパートナーになって子どもたちに何が起きたかは、マイクラカップ自治体パートナーが沖縄にもたらす効果|宜野湾市・県・コンテスト・eスポーツを現場から にまとめています。
マインクラフトで街を作る学び、子どものプログラミング、地域を題材にした作品づくり。宜野湾市は、この三つを公式に応援してくれている市です。地図データから作った宜野湾市のワールドは、その応援の延長線上にある取り組みだと自分は考えています。
ただし、このワークショップはクロスウェーブが企画しているもので、市の事業として決まったものではありません。そこは正確に書いておきます。
宜野湾プログラミングコンテストは、宜野湾の子どもが作品を出せる場所です
宜野湾市が子どものプログラミングを応援していることが、いちばん分かりやすく見えるのが、宜野湾プログラミングコンテストです。
宜野湾プログラミングコンテストは、全国規模の小学生向けコンテスト「Tech Kids Grand Prix(テック・キッズ・グランプリ)」の地域連携大会です。主催はクロスウェーブ、後援は宜野湾市教育委員会、協力はTech Kids Grand Prix運営事務局です。公式ページに出ている2026年の条件は、次のとおりです。
- 対象:沖縄県宜野湾市に住んでいる小学生、または宜野湾市のスクールに通う小学生
- 作品:プログラミングで作ったオリジナル作品。ロボットや電子工作など、特殊なハードウェアが必要な作品は対象外
- テーマ:自由
- 賞:最優秀賞、二位、三位。大会の優勝者は、Tech Kids Grand Prixの3次審査に進むことができます
2026年の大会は、9月30日で応募を締め切りました。いまは審査の期間で、表彰式は11月中旬の予定と Tech Kids Grand Prix 宜野湾地区大会の公式ページ に出ています。ウチも事務局として、いまは結果を待っているところです。
2025年度の大会では、クロスウェーブから挑戦した子が二位と三位に入りました。そのときの記録は 宜野湾プログラミングコンテストでクロスウェーブの生徒が2位・3位を受賞しました に書いています。三位の作品のタイトルは「走れ!喜友名按司」でした。喜友名は宜野湾市の地名です。宜野湾の子どもが、自分の街の名前と歴史をScratch(スクラッチ)のゲームにしていたんです。
ここが、今回のワールドとつながるところです。地図データの宜野湾市を歩いて、気になった場所を見つける。その場所のことを調べる。調べたことを、Scratchのゲームやクイズにする。テーマが自由な大会なので、宜野湾を舞台にした作品も出せます。地域を題材にした作品の考え方は 沖縄の課題をプログラミングで解決!宜野湾プログラミングコンテスト作品の地域課題アイデア にまとめています。
もちろん、地域を題材にしたから評価される、という約束はできません。作品がちゃんと動くか、作った子の考えが伝わるかが大事です。それでも、自分の街から題材を見つけた子は、作品を説明するときの言葉が具体的になります。それは2025年度の大会でも、教室で見てきたことです。
宜野湾市のマイクラで考えているワークショップのテーマ
ワークショップは、防災だけの授業にするつもりはありません。自分の街を知るためのテーマを、いくつか考えています。
- 自分の街を案内する:自分の学校や家の近く、よく行く公園や公民館を見つけて、友だちに案内する
- 通学路と坂道を歩く:いつもの通学路をマインクラフトの中でたどって、距離や高低差を確かめる
- 地図とのちがいを探す:ワールドと実際の街のズレを見つけて、写真や現地で確かめる
- 未来の宜野湾市を考える:こんな施設があったらいいな、を理由と一緒にマインクラフトで作る
- もし今、災害が起きたら?:公式のハザードマップを見ながら、学校から避難場所までの道をたどる
テーマが変わっても、進め方は同じです。ワールドの中で見つけて、地図や現地で調べて、マインクラフトで形にして、最後に人に説明する。未来の宜野湾市を考えるテーマは、マイクラカップの作品づくりにもそのままつながります。
いちばんやりたいのは、「地図とのちがいを探す」です。Arnisの街にはズレがあります。でも、そのズレがあるから、「この建物、本当はどんな形だっけ?」「この坂、こんなにきつかった?」という疑問が出てきます。疑問が出たら、実際の街を見に行ったり、写真や地図で確かめたりする。そっくりな街を見て「すごいね」で終わるより、違うところを見つけて現実を確かめに行く方が、学びとしてはずっと残ると思っています。この、フィールドワークとマイクラを行き来する流れは マインクラフト探究学習とは?フィールドワークで見つけた社会問題をマイクラで学ぶ方法 にも書いています。
防災のテーマを扱うときは、ひとつ決めていることがあります。このワールドには浸水想定区域や土砂災害警戒区域が入っているわけではなく、道幅や新しい道も現実と違うことがあります。実際の避難経路は、宜野湾市のハザードマップや、国土地理院の ハザードマップポータルサイト(重ねるハザードマップ) 、沖縄県の 沖縄県津波浸水想定 など、公式の地図で確かめます。マインクラフトは、自分の街について考えるきっかけをつくる道具です。この二つを混ぜないことは、子どもたちにも最初に伝えます。
プログラミングで、調べたことを仕掛けにする
街を歩いて調べたことは、プログラミングで仕掛けにしてもらうつもりです。使うのは、教育版マインクラフトのMakeCode(メイクコード)です。ブロックを組み合わせて動きを作れるので、プログラミングが初めての子でも入りやすいんですよね。
いま考えている仕掛けは、たとえばこんなものです。
- 村人(NPC)に話しかけると、その場所にまつわる宜野湾市のクイズが出る
- 学校から公園までの道のりを、何ブロック歩いたか数える
- 案内の看板を、プログラムで決まった場所に一気に立てる
どれも、街を調べたあとでないと中身が作れない仕掛けです。クイズを作るには答えを自分で調べないといけないし、距離を数えるにはどこからどこまでを測るかを決めないといけない。地図データで作った街の中で、調べることと作ることが自然につながるんです。
ここ、沖縄のプログラミング教室を探している保護者の方に一番伝えたいところです。プログラミングを覚えること自体が目的になると、何を作ればいいか分からなくなる子がけっこういます。自分の街という題材があると、「これを作りたいから、この命令が要る」という順番になる。この順番で覚えたことは、ほかの作品にも持っていけます。
MakeCodeの入口は MakeCodeコース詳細 に、Scratchから始めたい子向けの内容は Scratch(スクラッチ)プログラミング教室 にまとめています。
学校や自治体の方へ、このワールドでできることと注意点
学校の先生や、市町村で地域学習・まちづくり・防災を担当している方からの相談も想定して、いまの段階で言えることを書いておきます。
できること:
- 宜野湾市全域の道路のつながりと土地の高低差を、マインクラフトの中で歩いて確かめる
- 学校や公民館を起点に、地域の題材を見つける授業の入口にする
- 見つけた題材を、MakeCodeやScratchの作品、マイクラカップの作品、発表につなげる
使うときの注意:
- 建物の形や高さは現実と違う。建物を学ぶ授業には向かない
- 地図データは誰でも編集できるので、新しい道や施設が入っていないことがある
- 防災で使うときは、公式のハザードマップと必ずセットにする
- 市全体のワールドなので、そのまま渡すと子どもが迷う。スタート地点と目印を決めてから使う
時間や人数、使うパソコンは、学校や地域の状況に合わせて相談しながら決めたいと考えています。ほかの市町村で同じことをしたい場合も、地図データならPLATEAUのデータがない街でも作れます。PLATEAUのデータを使った自治体のマイクラ活用は PLATEAUで自治体はマインクラフトを何に使えるか|観光・防災・まちづくり・大会 に整理しています。ワールドを作る仕事としての相談は マインクラフト(マイクラ)のワールド制作代行 のページにまとめています。防災のワールドを頼むときの注意は、姉妹サイトの 防災のマインクラフトのワールド制作は、地図の代わりにはしない にも書きました。
同じ話を、地域を学ぶワークショップの視点からnoteにも書いています。沖縄で唯一のマイクラカップ自治体パートナー、宜野湾市をマインクラフトに!|地図データとPLATEAUとプログラミングで自分の街を学ぶ もあわせて読んでもらえるとうれしいです。
自分の街の話になると、子どもの言葉は急に具体的になります
ワークショップの最後には、子どもたちにこう聞いてみたいと思っています。
「もし君が、この街をもっと安全で暮らしやすくできるとしたら、何を変えたい?」
正直、この問いに大人がきれいな答えを用意しておく必要はないと思っています。教室で子どもたちを見ていて感じるのは、自分の知っている場所の話になると、言葉が急に具体的になるということです。土曜の宜野湾の教室でも、「バス停に日陰がない」という一言から話が広がったことが何度もありました。
「走れ!喜友名按司」を見たときも、同じことを感じました。自分の街の名前が入った作品は、作った子がいちばん説明したがるんですよね。地図データの宜野湾市は、そういう一言や題材を、もっとたくさん引き出せる場所になると思っています。どこまで子どもたちが食いついてくれるかは、正直やってみないと分かりません。日程が決まったら、あらためてお知らせします。
この記事を書いたのは、沖縄マイクラ部・クロスウェーブ代表の鈴木孝昌です。官公庁や自治体のWebサイト・システムの仕事を続けてきた経験を、子どもたちの地域の学びに生かしています。経歴は すずきたかまさ(鈴木孝昌)プロフィール ― 沖縄マイクラ部・クロスウェーブ代表 にまとめています。
クロスウェーブは、宜野湾・うるま・北谷で教室を開いています。宜野湾市のワールドを見てみたい方も、体験や見学の前に 教室へのアクセス で場所を確認してもらえると安心です。教室全体のことは 沖縄のマインクラフト・プログラミング教室 クロスウェーブ にまとめています。
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